今月の1冊(5)

2019年年初は公私ともにドタバタし、これが今年初ブログとなります。

さて、今回お勧めする1冊はちょっと固めの話とはなりますが佐々木雄一著の「陸奥宗光 日本外交の祖の生涯」(2018年10月出版、中公新書)です。

陸奥宗光は明治における外務大臣として諸外国との不平等条約改正や日清戦争の終結に尽力した人物として知られています。しかし、紀州藩出身と薩長閥時代にあって後ろ盾のない陸奥がなぜ外交の世界で頭角を現すことができたのかを知っている人は少ないのではないのでしょうか。本書では自らの能力に絶対的な自信を持つ陸奥が、明治の政治の世界で様々な駆け引きを行いながら徐々に階段を昇っていく過程が描かれています。この彼の軌跡もそれは面白いのですが、彼の動きから「明治時代の政治・体制」とはどのようなものだったのかを知ることができて大変興味深い。

さらに本書の著者は陸奥の性格を「対立や分裂を煽りそのなかで台頭していこうとする性格」(211P)とし、さらに伊藤博文との比較において「国内の政治的という点でも、伊藤と違って、常に成功を必要としていた。自らの才を頼りにさらなる政治的台頭を目指している陸奥は、短期的な損失を後々回収する、といったわけにはいかない」(217P)と言い切ります。そこに理想より現実としての目に見える結果を重視せざるを得ない陸奥宗光の苦悩が見えてきます。

最後に、本書を読み通して「陸奥宗光」の人物像を捕まえたうえで、266Pにある陸奥による「坂本龍馬」像を読んで頂きたい。坂本龍馬といえば司馬遼太郎の『龍馬がゆく』のイメージが定着しすぎという感がありますが、陸奥による「坂本」像を読んでみると龍馬にも図書を通してではありますが会いたくなると思います。

本書はそもそも小説ではないので読みやすいとは言えませんが、「出世を追う陸奥」「明治の政治・体制」おまけとしての「坂本龍馬像」など、読み終えれば得るものが多い図書として今回推薦します。

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