今月の1冊(17)

GW直前に東京大阪などに緊急事態宣言が出されるような状況となり、医療機関の方々のご苦労が心配されます。

さて、今回はこのような緊急性のある医療現場とは異なるもう一つの重要な医療現場として「いのちの停車場」(南 杏子著、幻冬舎文庫、2021年4月初版、単行本初版は2020年5月)をご紹介します。なお、この図書を原作とした映画(主演:吉永小百合、共演:西田敏行、松坂桃李、広瀬すず他)も5月中に上映されるとのことです。
本書は62歳の緊急医療の専門医師である主人公(白石咲和子)が勤務先の大学付属病院を去り、地元に戻ることからストーリーは始まります。地元金沢では年老いた元神経内科専門医である父が一人で暮らしており、この父の日常を支えながら在宅医療専門の診療所を手伝うかたちで、主人公は医療活動を再開します。

在宅医療とは確実に死に向かっている患者とその家族に、自宅で質の高い死を迎えさせていくもの。いわゆる「看取り」の最前線であり、前勤務先である救命救急センターが人の生命を何物にも代えて救うこととは異質な医療機関です。さらに同センターでは多くの専門スタッフと最新医療設備を備えるのに対し、在宅医療の現場ではスタッフ・設備は限られるという緊急医療とは異なる厳しさがあります。

本書は独立した6つの医療ケースを現場として在宅医療の役割を問いかけてきます。経済的理由から在宅医療を選ばざるを得ないケース、患者自らの人生観から在宅医療を積極的に選ぶケース、小児医療のケースなど大変厳しい現実を現場としながらも、最後は悲しいけれども温かい気持ちにさせてくれる各ストーリーとなっています。
最後の章は元専門医師である父から依頼される積極的安楽死。積極的安楽死の法的意味、医師としてのモラルの問題を踏まえたうえで、父は患者としての気持ちを主人公に託します。

以下、余談です。

「読んでから観るか、観てから読むか」というフレーズを聞きますが、本書のカバーに吉永さん、西田さんほかが登場していますが、これだけで半分映画を観たようなものですね。本書の読み始めから主人公のイメージは吉永さんであり、幼馴染の診療所長は西田さんになりました。本書の中盤になってやっと俳優の方々とは別のイメージを持つことができましたが、図書を自由なイメージを持ちながら読むということでは「出演者の氏名も観ないで読むか、観てから読むか」が正しいのかと思ったりしました。

現在の環境下、GW期間中はなかなか外出も難しいかと。その空いている時間の一部に本書を入れていただければ、この長めの休暇がより楽しめるかと思います。では、良いGWをお過ごしください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加