今月の1冊(31)


今年のGWは真ん中に3日間の通常日が挟まり、GWといえるのかどうか微妙ですね。小さいお子さんをお持ちのお母様方にあっては保育園が運営されているこの3日間がオアシスという意見があり、また、中高年にあっては長い連休の活用方法に苦労するという話も聞きます。なにごともほどほどが良いようです。

さて、今回ご紹介するのは『カラ売り屋シリーズ マネーモンスター』(黒木 亮著、幻冬舎、2024年4月)です。作者の黒木氏は半沢直樹シリーズで有名な池井戸潤氏とほぼ同時期に金融関係を主領域として出筆活動を始め、経済小説を中心に作品を発表されている方です。また、池井戸氏が三菱銀行に、黒木氏が三和銀行に勤務したという経歴面での共通性がありますが、それぞれの銀行員として活躍した業務内容や銀行後に勤務された業界の違いからか、池井戸氏が『銀行を主たる舞台とした銀行と融資先の関係』であるのに対し、黒木氏は『株式市場を主たる舞台としたカラ売り屋(注)と情報開示に不正のある企業との関係』です。黒木氏の作品は株式市場を舞台とすることもあり、経済や金融の知識をより必要とする面もありますが、両者ともに社会的正義を追い求めていることでは同じ面をもっています。

GWもこれから後半。黒木氏の企業の情報不開示に関する作品を本書に加えて幾冊かご紹介しますので、株式投資をすでに行っている方、今後考えている方も是非手に取ってみていただいてはいかがでしょうか。

【黒木 亮氏著作(抜粋)】
  • 青い蜃気楼(小説エンロン)、角川文庫、2004年8月
  • カラ売り屋、講談社文庫、2009年3月
  • ザ・コストカッター、角川文庫、2012年3月
  • カラ売り屋VS仮想通貨、角川書店、2021年8月
注:カラ売り家
(株式の)空売りとは、投資対象である株式を他者から借りて市場で売却し、後日市場から対象株式を購入し、借りた株式を返却し精算する行為を言います。例えば、1株1,000円で借りて売却し、返却時には1株500円で市場から購入できれば、1株当たり500円の利益が上げることになることになります。

本書で主人公が会社内容を正当に開示していない企業を見抜き、現在の不当に高い価格と本来正当に評価された場合の差額に基づく利益獲得を目指すとともに、このように企業の株式市場からの撤退を迫ります。