昭和世代男性を中心に爆発的に人気のあったテレビ番組『半沢直樹』が2020年9月27日に完結し、半沢ロスということばもあるのだとか。続編が期待されているようですが、小説の方では今回ご紹介する『アルルカンと道化師』(講談社)が9月17日に発刊されました。これから本書を購入するか迷っている方のために今回はこの図書をご紹介します。
テレビ番組でも紹介されている通り「半沢直樹」の原作は池井戸潤氏の『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』の4作であり、前二作を原作として2013年7月-9月、後二作を原作として2020年7-9月に「半沢直樹」が作成・放映されました。
今回紹介する『アルルカンと道化師』は内容的には第3作の『ロスジェネの逆襲』を思わせるM&A的なところもありますが、時間設定上は第1作の原作となる『オレたちバブル入行組』の直前となっています。従って、敵役にあの浅野支店長も部分的ですが登場します。
と、ここまで書くと今まで4作と相当似ているような感じがしますね。確かに似ていますが、でも本作品には明確な違いが1点あります。今までの4作品の縦横の軸が『組織的悪VS半沢』であり、『戦う手段は金融』であったことに対し、今回はこの縦横の軸にもう一つの軸『芸術にかかわる人間像』を加えています。金融といういつもの舞台上ではありますが、本書の帯紙にもあるように探偵半沢の登場です。
読者として作者の池井戸氏がこの半沢を今後どう生かしていくのか大変興味を持っていましたが、今回の探偵半沢とは恐れ入りました。他方、半沢が地道で、泥臭ささも併せ持つ優秀な銀行員であることも実感させられました。私もかつては同じく銀行員だったのですが、とても真似ができません。
以上、結論は「いつもの半沢作品ですが一味違います」。是非、ご一読ください。楽しいことは保証します。また、このように新たな軸を挿入する手法ならまだまだ半沢直樹は活躍できそうですね。何年後かに半沢直樹の続編を見ることができるかもしれないと期待させる作品でした。