今月の1冊(4)

年内最後のブログは「今月の1冊」です。今回は川名壮志著の「密着 最高裁のしごと」をお勧めします。本書の出版は2016年11月(岩波新書)と2年前ですが書店で十分購入でき、内容的にはやはり「岩波新書」のレベルの高さを持ちつつとても平易な文章です。

本書は私の世代が小学校の頃に習った裁判所の三審制が、実際には主張・証拠に基づき白黒をつける地裁・高裁などの事実審と、事実問題には原則触れないで憲法違反など法律問題のみを判断する最高裁とに分かれていることを明らかにし、では最高裁は何をするところかを説明します。この際、一般の人にもなじみの深い「子のDNA鑑定結果と父子関係」「夫婦別姓」における最高裁判決を解説し、最高裁の法律審の意味を説明します。なお、平成25年には最高裁の判決を受けて「非嫡出子の相続分」が平等になる民法の改正が行われました。

次に重大な刑事裁判に導入されている裁判員裁判における刑の量刑について「松戸女子大生殺人事件」「寝屋川市虐待死事件」など複数の裁判事例を取り上げて最高裁の判断基準を説明します。最高裁は法律の専門家ではない裁判員の判断を生かしながら法律上の公平を確保しようとします。

この我々の生活に重大な影響を与える最高裁裁判官は定期的に国民の審査を受けることになっていますが、ともするとこの審査に全く無関心になっているのではないでしょうか?しかし、最高裁裁判官は本書に示されるように我々の生活に密着した裁判に最終的決定を行います。さらに各裁判官の判断も開示されます。我々国民にはそれぞれの裁判官がどう考えたのか審査できる十分な情報提供がされるような仕組みになっています。国民審査に積極的に参加し、また今後の最高裁判決を楽しんではいかがでしょうか。