今月の1冊(29)

新型コロナウィルス感染症が5類感染症に移行し、日本中の観光地に国内外から人があふれ出してきましたね。数日前に社内行事で札幌およびその近郊を回りましたが、アジアの方々や非英語圏の欧州の方でしょうか、沢山の海外からの観光ツアーの方々を見かけました。

さて、今回の1冊は『ヴィンテージガール 仕立屋探偵桐ケ谷京介』(川瀬七緒著、講談社文庫、2023年5月)です。川瀬氏の図書としては「法医昆虫学捜査官」がシリーズで出版されており、かなりの部数が出ています。個人的には以前からこちらをお勧めしたかったのですが、何せ「蠅」の腐乱死体に集まる習性を利用して犯人を捜すという内容なので、ちょっと控えていました。これに対し今回は、文化服装学院出身の川瀬氏が、個性豊かな登場人物を使って着慣れた衣服に現れる特徴から事件の本質に迫ろうというもの。登場人物は忘れ去られようとする人間国宝のような職人さん、異能と言える才能をもつ方々などまことに多彩。それぞれの登場人物が、その異能・職人技を活用して、事件の真相に迫ります。また、着慣れた衣服に現れる着衣者本人の人体的特徴に関する知見は興味津々。当然というべきか、ストーリーは思わぬ方向へ動いていきます。エンターテイメントとして楽しいのは勿論のこと、川瀬氏の衣料に関する知識も満載。是非、ご一読をお勧めします。なお、「蠅」が大丈夫な方は「法医昆虫学捜査官」シリーズも楽しいですよ。