今月の1冊(32)

日本時間の今朝は、パリ・オリンピックでフェンシング男子フルーレチームが初の金メダルを獲得。感動です。勝負の世界ですから幸不幸・運不運色々起きますが、全力で戦うアスリートの皆様を心から応援をしたいものですね。

さて、何事にも億劫になりがちな暑い夏の読書として、軽め・読みやすい・興味を持ちやすいと3拍子を兼ね備えた1冊をご紹介したいと思います。『高虎と天海』(早見俊、新潮文庫、2024年8月)です。主なる登場人物は、徳川家康側近として家康を支えた築城の名人でもあった藤堂高虎、同じく家康を支えた側近天台宗僧侶天海、そして家康本人。筆者はこの3名を軸に関ケ原の戦いから江戸幕府成立への道のりを説明していきます。その中で特に重要な史実が関ヶ原の戦いと大阪冬の陣・夏の陣ですが、その意味付けが実に面白い。本書内で徳川家康に関ケ原の戦いの「勝者は太閤秀吉」と言わしめ、大阪冬の陣、夏の陣の切っ掛けとなった「国家安康、君臣豊楽」という文字利用に対しては「他愛のない言いがかり」と一旦否定的な対応をさせています。しかし、そのあと言いがかりと思いつつ家康はそれを利用し大阪城攻めを実行しています。それはなぜか?

暑い日が続きます。本書は読みやすく清涼感もあり、一読されては如何でしょうか。