今月の1冊(23)

政治的な色合いが強いといわれた北京オリンピックが終了し、3月からはパラリンピックです。やはり大会の主役はアスリート。その活躍、素晴らしさに感動です。

さて、もう一つの大きな出来事である新コロナは未だにオミクロン株という爆発的感染力と低重症化率という特徴を持つ新株が世界を翻弄しています。ということで、今回はエボラウィルスの世界的研究者である髙田礼人北大教授の著書「ウィルスは悪者か」(髙田礼人著、2018年11月初刷、亜紀書房)をご紹介したいと思います。

まず、本書の特徴は①新型コロナが広がる前に書かれていること、②ウィルスのメカニズムをウィルス感染症罹患との関連に主眼を置いて書かれていること、③話が時々脱線して楽しいの3点です。

本書77pのウィルス感染経路では飛沫感染と飛沫核感染(空気感染)の違いが記載され、162p以降には日本のウィルス研究・創薬が遅れている理由が述べられています。さらに256Pには感染力の強いウィルスはなぜ重症化率が下がるかが述べられています。この図書が新型コロナ前に書かれていることを考えると、この2年間の政治や行政の新型コロナを巡る混乱は何だったのかと思います。ここに素人の私でもわかるようにウィルスによる感染症拡大のメカニズムや日本での研究進展のための課題が説明されています。また、ウィルス研究者の感染症予防に向けたフィールド・ワークが楽しそうに書かれていますが、正直大変だなあの一言。是非是非、一読をお勧めします。

なお、高田教授は2015年1月放映のNHKプロフェショナル 仕事の流儀「脅威のエボラ、英知をかけて挑む ~ウィルス学者・高田礼人」で紹介されています。この番組は現在もNHKオンデマンドで視聴ができます。

余談ですが、高田教授の所属する北大人獣共通感染症リサーチセンターの組織図には某大手医薬品メーカー名を冠するウィルス薬研究部門があり、産学連携の大切さとともに、この企業の名前がコロナワクチンや治療薬でたびたび話題となるのが理解できるような気がしました。

最後に㈱ツヅキではウィルス不活性化機能ほか多機能性内装用建材「圭」(主原料は稚内珪藻頁岩)をまもなく発売しますので、こちらにも注目ください。