今月の1冊(21)

東京オリンピックが閉会し、パラリンピックが開催されました。着実に時は流れていますが、コロナの猛威は相変わらず。やはり在宅、時差出勤を積極的に行い、罹患リスクを下げたいものですね。

ということで、当社新年度初のブログは今月の1冊。ご紹介するのは「ゴーストタウン 冥界のホームズ」(高清仁氏原案、柳広司氏作、2021年7月25日初版、角川文庫)です。本書はシャーロック・ホームズが滝壺に転落して消えてしまった「最後の事件」から、突然復活してくる「空家の冒険」までの空白の期間のストーリーを創作し、ホームズ復活のなぞを解く作品となっています。

最初の60ページほどは高清氏がイメージした奇想天外な冥界にホームズとワトソンが夫々骸骨、黒い犬として出現し、どこに話が向かっていくか全く見えてきません。それこそ思わず読むのをやめようかと思うほど。

しかし、次の章ではホームズの宿敵モリアーティが突然現れ、急激に緊張感の高まる展開に変わり、ホームズとワトソンは追い詰められます。出だしののんびりムードから転調し、アップテンポな展開です。
この絶体絶命の中、残りのページ数もわずかになった時に作者は思いもやらぬドンデン返しを用意します。

最後にこのシナリオがなぜホームズの復活につながるかを説明し、まさに起承転結の見本。作者のストーリーテーラーとしての凄さを感じました。
コロナ下、自宅で過ごす時間が増えています。秋の夜長を過ごす友として本作品はいかがでしょうか。

なお、柳広司氏の図書としては以前に風神雷神を紹介しています。また、代表作としては戦時中の傍流的な陸軍系スパイを描いたジョーカー、ダブルジョーカーがあります。
こちらもお勧めです。