今月の1冊(20)

昨日「法隆寺を支えた木」を推薦したばかりですが、前々回推薦したのが「AI人工知能」と硬い本が続きましたので、ここで気分を変える意味でもう1冊をご紹介します。

今回は広く馴染みのある第八代将軍徳川吉宗をテーマとした「吉宗の星」(谷津矢車著、実業之日本社、日本経済新聞出版社、2021年5月初版)です。

ご存知の方も多いと思いますが、吉宗は紀州藩藩主の四男に生まれながら藩主を継ぎ、さらに将軍家に後継者が途切れると御三家出身では初となる養子として将軍家を継いで八代将軍につきます。これを運の良さ・めぐり合わせとみるか、何らかの人為的所作の結果とみるか。本書では後者の立場で若き日の吉宗の姿を描いていきます。

もう一つの視点は「将軍と幕閣」の関係は何かを、実力派老中松平乗邑を中心とする幕閣を輩出する名門譜代大名グループとの政策推進上の主導権争いとして描いていきます。さらにこの2つの軸を中心に吉宗自身に将軍職とは何なのか自問させます。ここで描かれているのは全く新しい吉宗像ではありますが、それ以上に将軍職の役割、将軍と幕閣の関係であり、現代のオーナー企業における経営者の役割、世代交代や世襲をした経営者と実力派役員との力関係にも似ているかもしれません。

以上、引き込まれる内容です。是非、新しい吉宗像・将軍像に出会ってください。