新入社員の離職問題(3)

今回の写真は宇都宮市大谷町にある平和観音。この大谷石の岩壁を手彫りした高さ27メートルの観音様は、戦没者の追悼と世界平和を祈念して昭和31年に開眼供養されたとのこと。平成が終わり令和になるこの年、さらに「昭和に遠くになりにけり」ですが、平和の大切さに思いを及ぼす良い機会かなと選んでみました。

さて、今は4月、入社式の季節。そこで「新入社員の離職問題」を取り上げます。

ツヅキでは5月に㈱Danto Tileを含めた4社合同での(新任)課長研修を予定しています。今回の課長研修のテーマは3つあり、(1)は組織の中での課長の役割の明確化、(2)は部下の状況把握と対応力のアップ、(3)は異業種交流による固定観念の自覚です。その中の(2)が「新入社員の離職問題」と密接に関連します。

20年ほど前の「部下の状況把握手法」といえば、定期的に部下に公私にわたる希望・問題などを書面で提出させ、その書面に基づき上司が面談・フィードバックするというのが一般的だったかと思います。この手法の前提は部下が秘匿される書面には希望や問題を率直に書き、また、書かなくても個別面接ではかなり本音を話してもらえるということでした。もし、話してもらえない場合には、それはその上司の個性など固有な例外的事例ととらえる傾向があったと思います。それに対していじめという問題が学校のみならず企業などの人が複数存在するところでは当然に存在する昨今では、この前提条件である「部下は本音を話してくれる」ことが例外的と思われます。

学校でいじめが発覚した場合、学校側の言い訳に「児童にアンケートで確認した」ということを挙げる例が見られますが、子どもたちはアンケート内容が漏れた場合のことを危惧し、誰かを傷つけ逆恨みをされることを避け、学校の期待に沿った当たり障りのないことを書くようになっていると感じます。従って、このようなアンケートでは何らの解決策にならないと強く感じます。

社会人の場合も同じく、退職に当たっての本音を話すと誰かを傷つけ逆恨みをされたり、理由によっては会社が特定の相手を指導することを条件に離職を強くひきとめられたりすることが生じます。このような他人に悪く思われる可能性のある言動を避け続けてきたのが現代の若者の一つの特徴でしょう。従って、部下の状況把握手法として本音を話してもらえること前提とする面接はもはや有効でないというのが私の結論です。面接を活用するには前段階での情報収集が極めて重要で、面接は収集した情報から導き出した改善策を伝える手段としては有効かと思います。即ち、「観察」と「気づき」という手段を最大限重要視していただきたいと思います。特に何気ない時の表情が大切です。部下の顔に生気がない、目に落ち着きがないという日が続いたら、現在の業務状況、周りの人間関係に目を配ってみましょう。きっとどこかに原因となるトラブルや人間関係が存在します。これを見つけられない限り、早晩離職申し出となると思います。そして、その申し出のときには、実際の理由とは異なる「誰も傷つけず、かつ、引き留めるのが非常に難しい理由」を申し出てきます。要は手遅れです。「顔色を窺う」のではなく、表情を観察し気づくセンスを磨くことが重要です。きっと、新人や若手社員が定着しない原因・理由が見えてくると思います。

以上