職人さん不足に思う(3)

今回の写真は奈良興福寺の北円堂(国宝)。「日本に現存する八角円堂では最も美しい」と興福寺のHPではありましたが、確かに美しい。堂内には本尊弥勒如来、法苑林大妙相菩薩、無著世親菩薩像、四天王像の国宝が安置されており、私の大変好きな空間の一つです。ただ、特別公開時以外にはお堂内の拝観ができませんのでご注意願います。

さて、統計資料によると2015年から2030年間において労働可能人口(15歳以上65歳未満)が10百万人減少するそうです。この数字はすでに出生している人口が対象であり、この世代の死亡率はそもそも高くはないので、10百万人の減少は確定している事実と考えて良いでしょう。他方、職人さんは従事する業務によっては熟練に10年以上必要とする場合もあり、高齢化する職人さんを未経験の若手人材で補うことは不可能でしょう。

工場の熟練者の場合は進化するAIとの補完が進んでいるようです。しかし、私が従事している業界で職人さんが活躍する場所は建築現場なので、職人不足問題の方向性は工場での資材のプリセット化により作業効率を上げる、熟練性を要する業務を工法・資材等の変更により一般的人材でも対応可能な業務への転換を進めることだと考えています。

そこで今回実際にやってみることにしました。まず、ツヅキ社高松営業所を自社施工物件に移転することを決定。外断熱外壁の施工販売部門を元請けと位置づけ、その新社屋の外装タイル張りを同作業未経験のツヅキ従業員による金具留方式で実施することにしました。技術系の超ベテランの開発副本部長と建築学部出身の入社2年目の従業員2名、計3名が高松で合宿生活を行いながらの作業です。他方、本社開発部門とタイル供給を行うDanto Tile社(こちらの社長も私が兼務です)にはフック型金具留工法、レール引掛け工法、アルミ下地工法の3種類の工法と専用タイルの開発・試験・検証をお願いし、先行させました。

現在、1週間程度の遅れが出ていますが両社から毎日のように応援を出したこともあり何とか年内完成ができそうです。仕上げレベルの向上のため、タイル張り専門の業者の方々に一部アドバイスを頂きましたが、とにもかくにも開口部分を含め熟練した職人さんなしでも工事ができることが確認できたことは大きな収穫でした。

これから内装工事になります。ここでは従来の工法によりマジョリカタイルなどユニークなタイルをふんだんに利用し、職人さんにフルに活躍してもらおうかと思っています。低価格ボリュームゾーンは非職人さんで効率重視、少量中高価格ゾーンは職人さんで品質重視と分担すれば職人さん不足を補えるとともに、職人さんの労働条件改善もできるのではと考えて今後工法・製品の一層の進化を進める予定です。

以上、私の結論は「職人さん不足には工法と資材の開発により職人さんと非職人さんの分業化・効率アップにより実現」するです。具体的には300mm×600mmの大判タイルを今回開発したフック金具と新工法で留めることで施工性を上げました。レール留工法では既存品の厚みを2/3に圧縮・軽量化し、躯体への負担を軽減。さらに今回は利用しませんでしたが女性でも取り扱える厚み5mm、300mm×300mmサイズの軽量タイルとそのレール留め工法開発も進めました。なお、この工法で来年木造の我が家の外壁改修にしてみようかと考えています。

では、12月のブログには高松の新社屋の写真を掲示しますのでご期待ください。