職人さん不足に思う(1)

新聞紙上でよく職人さん不足の記事が取り上げられ、その主たる原因として少子高齢化、3k、低賃金があげられているように見えます。

ツヅキ社はアルミ建材の取り付けまでを引き受けている関係から、年1,2回安全大会・懇親会を開催し職人さん方とのコミュニケーションを図っています。私の実感は収入の不安定さが最大の原因です。建設施工会社・職人さん方はそれぞれ専門業務を持っており、建築開始時期が年度初期に集中する現在の建築業界のパターンでは、基礎から完工まですべてに関与するゼネコン以外は季節性の強い事業といわざるを得ません。一定の規模・体力がある企業により常用雇用されている職人さんを除き、職人さんの収入はこの季節変動性に大きく左右されます。すなわち職人さんとは収入が不安定な職業であり、世のお母さんは息子さんに職業としての職人を進めることはないでしょう。従って、どう頑張っても職人さん不足は解決しない。

では、どうしたら良いのか?私の結論は工事着工時期の平準化・現場工程の工場加工への移管です。その具体的方法は今後書きますが、まず今回は職人さんの多能化について見てみます。そもそも「優れた技能者」を職人と定義するとその域に達するには一定年限の経験が必ず必要です。その期間を短縮して多能化しようとすると「中途半端な多能職人さん」を作り出すか、類似職種に限定されます。それは職人さんの望むことなのかも疑問です。香港駐在時代によく行っていた高級和食店の板さんが「なんでもやると腕が荒れる」といっていたことを思い出します。海外の和食店では寿司・天ぷら・鉄板焼きを同じお店で出すことが多く、職人さんたちは多能化しています。結果、専門性が弱く日本に帰ってもなかなかちゃんとしたお店で働けないという話を聞きました。真の熟練を必要としない工務については製品・治具開発も追いかけてくる。当社が進めるタイルの湿式貼付をアルミフレーム+引掛タイルで代用しようというものその一環にあります。

職人さん不足の緩和策としての部分的多能化、または類似業務における複能化はありだが、技量未熟な多能職人さん、所謂「なんちゃって職人さん」にならないことを願いたいものです。私自身は職人さんの多能化は雇用側の論理が強く、職人さん方にとって魅力的な案とは思いません。